ぬか炊きは、イワシやサバなどを、醤油、みりん、砂糖などを加えて炊き込み、最後にぬかみそを調味料として加え、炊き上げます。ぬかみそを加えることで、青魚特有の臭みが消え、また、ぬか床に漬け込まれた野菜のエキスや山椒や唐辛子の風味、発酵によるほのかな酸味が特有の旨味を引き出します。山椒を必ず漬け込むことが小倉城周辺のぬか床の特徴であり、そのぬかみそで作ったぬか炊きはご飯にもお酒にも相性がぴったりです。最近では、イワシやサバ以外に、ちりめん、さんま、筍、椎茸、鶏肉、卵、蒟蒻など、さまざまなぬか炊きが出てきています。
お茶漬けとしてご飯に乗せて、熱いお湯をかけて食べるのが基本の食べ方ですが、その他にも「ごはんと混ぜておにぎり」「キャベツやピーマンなどと一緒に野菜炒め」「冷やご飯と玉子を加えて焼きめし」といったレシピの他に、アンチョビのような感覚で「バターやオーリーブオイルを塗ったバゲットなどのパン」や「茹でたパスタにバターと香味野菜を絡めた、ぬかみそだきパスタ」のように多彩なアレンジが可能です。
ぬか床は、毎日かき混ぜて「世話をする」ことで、野菜についている微生物の中の乳酸菌や酵母菌がぬか床に浸透し、更なる熟成や発酵につながります。状態のよいぬか床では、1gに乳酸菌は1億~10億、酵母菌は100万~1000万存在すると言われています。ぬか炊きの調理過程で乳酸菌は死滅しますが、ペプチドグリカンという乳酸菌の細胞壁は残り、体内の有害成分を吸着し、体外へ運び出すなどの作用があります。また、青魚にはカルシウムをはじめ、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが含まれます。煮汁には青魚から溶け出したn-3系多価不飽和脂肪酸(EPA、DHA)が一定量残ることから、煮汁と一緒にぬか炊きを食べると、さらに栄養価がアップします。
伝統の味を守るために毎日毎日手作業で、時間をかけて丁寧に作られているぬかみそ炊き。脂の乗った「さば・いわし」を一尾一尾、丁寧に下処理し、ミネラル分の多い「ぬか床」で長時間以上じっくりと炊き上げることで、ぬか床特有の臭いが消え、格調高い風味とコクが生まれます。ぬかみそ自体が乳酸菌の宝庫とも云われる程の発酵食品なので、ぬかみそだきは地元の味でもあり、美味しい健康食品でもあります。